5月17日 LIVE受講 / 5月18日~5月24日 録画受講
[Webinar/Full KIT/data]
3D LiDAR×Jetson Superキットで学ぶ
高精度リアルタイムSLAM&センサ・フュージョン
点群スキャン・マッチングからグラフベース最適化,SLAMフレームワークGLIMの使用方法まで
- 講師:著者:小出 健司(産業技術総合研究所)
- 企画編集・主催:ZEPエンジニアリング株式会社
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お申し込み
下記スケジュール表のまたはボタンをクリックし,必要事項の入力をお願いいたします.
本セミナのお申込み前にご理解いただきたいこと
- [Webinar/Full KIT/data]コース(フルキット構成)の予価は,199,000円~247,500円です.Jetson Orin Nano Super開発者キットの入手が困難な状況が続いています.仕入れが難しい場合,代替としてJetson Orin Nano開発者キットで実施予定です.フルキット構成をご希望の方については,予約のみ受け付け,4月末に最終判断のうえ,ご案内いたします.
万が一,どちらのキットも確保ができなかった場合は,Jetson Orin Nano Super開発者キットの安定供給後に開催する可能性があります.その際もお申し込みいただいた方へ個別にご案内いたします.
※お問い合わせ:info@zep.co.jp - 後述の部材(1)~(3)をご自身で準備可能な方は,[Webinar/Semi KIT/data]コースがおすすめです.
- 上記の時間は,セミナの開始/終了時間です.本セミナに申し込んだ方は,見逃し配信による受講も可能です.
- 実習用部材は,講演7日~10日前に宅急便にて送付します.また,講義テキストは講演1週間前にメールにて送付予定です.
- 講義テキスト,ソースコード類は1人1ライセンスとなります.
- セミナの映像,画像,文書テキスト,ソースコードは,著作権法により厳格に保護されています.無許可の転載,複製,転用は禁止されており,法律により罰せられる場合があります.
本講義で配布する実習キット
- 計算ユニット:
Jetson Orin Nano Super開発者キット(6コアCPU@1.7GHz,1024CUDA,67TOPS,8GB LPDDR5,7W-25W)またはJetson Orin Nano 開発者キット(6コアCPU@1.5GHz,1024CUDA,40TOPS,8GB LPDDR5,7W-25W)のいずれか - 3D LiDARモジュール:
3D LiDAR Livox MID360[水平視野角360°,垂直視野角-7°~52°,測距範囲10cm~70m(反射率10%で40m,80%で70m), 点群密度20万点/秒, IMU内蔵, 265g]&3線式航空コネクタ - 電源・ケーブル類:
・Livox用電源ケーブル (USB-C -> DC12V)
・USB-C PD対応電源
・電源3ピン→2ピン変換プラグ - 実習環境ストレージ:
実習環境書き込済みNVME SSD 512GB
コース別の配布内容
- [Webinar/Full KIT/data]コース:上記すべての部材を送付
- [Webinar/Semi KIT/data]コース:上記(4) の実習環境ストレージのみを送付
学ぶこと
あらまし
3次元LiDARは,レーザ測距によってリアルタイムの3次元構造を計測できるセンサです.自動運転車両やサービス・ロボットなどに広く使用されています.特にLiDARを使用した3次元点群SLAM(自己位置推定・環境地図生成)技術は,あらゆる自律システムの開発に欠かせません.
本セミナでは,3次元点群SLAMについて,最も基礎となるICP(Iterative Closest Point)スキャン・マッチングからファクタ・グラフ最適化による実践的センサ・フュージョンまで体系的に学びます.
座学での理論学習と合わせて,キットに含まれる3D LiDARを使った点群処理の実装実習と,SLAMフレームワーク(GLIM)の体験を通して実践的な技術を習得します.キットにはデータ(ROS2 bag)記録スクリプトなども同梱するため,LiDARを使った研究開発にそのまま役立てることができます.LiDAR SLAM関連技術についての最新の動向にも触れます.
アジェンダ
- セミナ全体像
- LiDARによる3次元計測について
- LiDARとは
- 3次元表現について
- 3次元点群の利用について
- 教材について
- ハードウェアについて
- 同梱ソフトウェアについて
- LiDARによる3次元計測について
- 点群レジストレーション
- 点群レジストレーションの基礎知識
- 点群レジストレーションとは
- ICP (Iterative Closest Point)
- 最小二乗法による姿勢変数の最適化
- 点群レジストレーションの実装 (実習)
- キットを使った点群データの計測
- ICP誤差関数の実装
- ガウスニュートン法の実装
- 点群レジストレーションの発展的知識
- 局所的点群レジストレーション
- 大域的点群レジストレーション
- 点群レジストレーションの基礎知識
- ファクタ・グラフ最適化によるセンサ・フュージョン
- センサ・フュージョンの基礎知識
- センサ・フュージョンとは
- 最小2乗法による
- ファクタ・グラフ最適化
- ファクタ・グラフ最適化の実装
- ライブラリの紹介 (GTSAM & gtsam_points)
- マルチスキャン・レジストレーションの実装
- カスタム・ファクタによる重力方向情報の付加
- センサ・フュージョンの基礎知識
- 3D LiDAR-IMU SLAM フレームワーク (GLIM) の利用
- SLAM内部動作の説明
- フレームワーク全体像と特色の説明
- オドメトリ推定
- 大域軌跡最適化
- GLIMの起動とパラメータ調整
- SLAM内部動作の説明
- LiDAR SLAM関連技術の今後の展望
- LiDAR SLAMの最新動向
- センサ・フュージョン方式 (タイト・カップリング / ルーズ・カップリング)
- 大域最適化方式 (ポーズ・グラフ / マルチスキャン・レジストレーション / バンドル調整)
- 大域姿勢推定の最新動向
- 大域姿勢推定の応用先
- 再訪検知手法
- 特徴点マッチングによる大域姿勢推定
- 直接点群マッチングによる大域姿勢推定
- ノンパラメトリック状態推定の最新動向
- LiDAR SLAMの最新動向
キーワード解説(著:ZEPエンジニアリング)
SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)
自己位置と環境地図の同時推定と訳される.ロボットや自動運転車が周囲の環境を地図として認識しながら,自分の位置を特定する技術.カメラやLiDARなどのセンサを使い,周囲の特徴を捉えながら,自分がどこにいるのかを推定し,地図を同時に作成する.例えば,自動運転車は走行しながら道路や建物をマッピングし,自分の位置を正確に把握する.ロボット掃除機もSLAMを活用し,部屋の形状を認識しながら効率よく動く.拡張現実(AR)技術でも,空間を正しく把握するために使われている.
Jetson Orin Nano Super開発者キット
NVIDIAが提供する高性能なAIコンピュータ.コンパクトながら大幅な性能向上を実現している.従来のJetson Orin Nanoと比較して,AI性能が最大1.7倍向上し,67TOPSの推論性能を備える.メモリ帯域幅は102GB/s,CPUクロックは1.7GHz.ビジョン・トランスフォーマや大規模言語モデルなどの最新の生成AIをスムーズに実行可能.視覚処理やロボット工学,組み込みAIの開発に適しており,開発者や学生,メーカにとって優れた選択肢となる.価格は249ドル.既存のJetson Orin Nano開発者キットのユーザもソフトウェアのアップデートにより同様の性能向上を得ることができる.NVIDIAのJetPack SDKを活用すれば,CUDA,TensorRT,DeepStreamなどのAIツールを容易に利用でき,開発の効率を大幅に向上させることが可能.
参考ページ:NVIDIA Jetson Orin Nano Developer Kit Gets a “Super” Boost
点群レジストレーション
異なる視点やセンサで取得した複数の点群データを,同じ座標系に統一する技術.3DスキャンやLiDAR計測などで得られる位置や向きの異なる点群を重ね合わせることで,正確な3D形状を再構築できる.代表的な手法として,対応点を用いるICP(Iterative Closest Point)や,特徴点を活用するRANSACベースの手法がある.自動運転,ロボット・ナビゲーション,医療画像処理など幅広い分野で活用されており,正確な3Dモデル作成や位置推定の基盤となる重要な技術.
スキャン・マッチング
ロボットや自動運転車がLiDARやカメラなどのセンサーを用いて取得した環境データを比較し,自分の位置や移動量を推定する技術.取得したスキャンデータを既存の地図や直前のスキャンと照合し,最適な位置合わせを行うことで自己位置を推定する.主な手法には,点群の最適な一致を求めるICP(Iterative Closest Point)や,確率的手法を用いるNDT(Normal Distributions Transform)がある.
ファクタ・グラフ
確率分布を効率的に表現し,計算を簡略化するためのグラフ構造.変数ノードとファクタ・ノードの2種類のノードをもち,変数間の依存関係を明示的に示す.ファクタ・ノードは,複数の変数が満たすべき条件や関係を表し,ベイジアン・ネットワークやマルコフ確率場の計算を効率化する役割を果たす.主に機械学習やロボットの自己位置推定,SLAM,誤差補正などに用いられ,大規模な確率推論を実現するためのツール
GLIM(3D Range-Inertial Localization and Mapping with GPU-Accelerated Scan Matching Factors)
GLIMは,GPUを活用したスキャン・マッチングによる3次元点群・IMU SLAMのフレームワーク.従来のSLAMでは,自己位置推定のドリフト補正やセンサ・データの統合処理に課題があったが,GLIMは以下の点で改良が加えられている.
- 固定ラグスムージング(Fixed-lag Smoothing)を活用し、過去のセンサ状態を最適化しながらドリフトを補正
- キーフレームベースの点群マッチングにより,精度を向上させつつ計算コストを削減
- GPU並列処理を活用し,高速な計算を実現(従来のCPUベースの処理よりリアルタイム性が向上)
- IMUとの統合により,点群データのみでは困難な環境でも安定した自己位置推定が可能
GLIMは特に自動運転やロボットの高精度SLAMに適しており,少ない点群オーバーラップでも高精度なマッピングを実現できる.
大域姿勢推定
ロボットや自動運転車などが周囲の環境情報を基に,自身の位置と向きをグローバルな座標系で推定する技術.GPS,LiDAR,カメラ,IMU(慣性測定装置)などのセンサ情報を統合し,地図や既存のデータと照合することで,高精度な自己位置と姿勢を算出する.これにより,ナビゲーションや環境認識が可能になり,特に屋外の移動体において重要な役割を果たす.SLAMとの組み合わせや深層学習を活用することで,より高精度な推定が実現される
受講対象
- ロボットなどの環境を認識して自律で動くシステムに興味がある技術者・学生
- 点群を使った状態推定の理論を勉強し,実際に実装して動かしてみたい方
あると望ましい予備知識
- C++とPythonによる小規模なプログラミング経験
- ROS2のセットアップやノード起動などの基礎知識
講演の目標
- 点群SLAMの基礎から応用の理論と実装を習得する
実習に必要な周辺環境
ディスプレイポート接続可能なモニタ,キーボード,マウス (実習はJetson上で行います)
講師紹介
略歴
豊橋技術科学大学で博士課程修了後,イタリア・パドヴァ大学での勤務を経て,現在は産業技術総合研究所で主任研究員を務める.
点群自己位置推定・環境地図生成を中心に,移動ロボットの環境認識・行動計画に関わる研究開発に従事する.
主な著書
- Koide et al., GLIM: 3D Range-Inertial Localization and Mapping with GPU-Accelerated Scan Matching Factors, Robotics and Autonomous Systems, Vol. 179, pp. 104750, 2024
- Koide et al., Globally Consistent 3D LiDAR Mapping with GPU-accelerated GICP Matching Cost Factors, IEEE Robotics and Automation Letters, Vol. 6, Issue. 4, pp. 8591-8598, Oct., 2021
- Koide., small_gicp: Efficient and parallel algorithms for point cloud registration, The Journal of Open Source Software, Vol. 9, pp. 6948, 2024
受賞歴
- 第30回 ロボティクスシンポジア 最優秀賞, Mar., 2025
- 第27回 ロボティクスシンポジア最優秀賞, Mar., 2022
- 計測自動制御学会SI部門 若手奨励賞, Dec., 2024
- IEEE Robotics and Automation Letters Outstanding Reviewer, May, 2023
- SICE International Young Authors Award for IROS2022, Oct., 2022
参考URL
- 教材コード:"gtsam_points : A collection of GTSAM factors and optimizers for point cloud SLAM", https://github.com/koide3/gtsam_points
- 教材コード:"GLIM : Versatile and Extensible Range-based 3D Localization and Mapping Framework", https://github.com/koide3/glim