ラズパイ+USB SDRで作る
Flightradar24 Businessアカウント・フィーダ
地域の航空機プロフィールを24時間報告して空の安全管理チームに参加する
- 著者・講師:井上 祐寛/Takuhiro Inoue(株式会社クレスコ)
- 企画編集・主催:ZEPエンジニアリング株式会社
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衝突回避のため航空機は位置や速度を地上に送信している
飛行機の位置情報をライブで確認できるサービスが増えています.その中でもFlightradar24は特に注目されています(図1).
図1 ウェブサイト Flightradar24は,飛行中の民間航空機の現在位置をリアルタイムに表示している |
Flightradar24は,飛行中の民間航空機の位置をリアルタイムで表示するウェブサイトおよびモバイル・アプリケーションです.
2006年にスウェーデンに住む2人の航空ファンにより始められ,2009年にサービスが公開されました.このサービスは,航空機からのADS-B電波を受信して表示しています.以前は受信設備が設置できない地域の航空機は表示できませんでしたが,現在は人工衛星の位置情報によってほぼ全地域をカバーしています.
航空機のプロフィールを報告して,空の安全性を高める
ADS-B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast)は,航空機が自らの位置情報を定期的に送信するシステムです.
ADS-Bが送信するデータには,航空機の識別情報,現在の高度,速度,方向などの情報が含まれており,これらの情報をリアルタイムで解析することで,航空機の現在の状況を詳細に把握できます(図2).
これらのデータは航空管制と監視における状況認識を高め,飛行中の航空機間における衝突回避に利用されるなど,空の安全に活用されます.
航空関連のビジネス・ユーザも利用する“Businessアカウント”
Flightradar24には,無料のBasicからSilver,Gold,Businessの4つのアカウントが用意されています(図3).
最上位に位置するBusinessアカウントは,広告表示がなく,Basicアカウントでは見ることができなかった機体のシリアル・ナンバ,運用年数などの機体情報や速度,温度,スコーク情報(緊急事態通知などにも使われる)や,過去のフライト情報まで知ることができます.これは,航空関連のビジネス・ユーザや航空業界のプロフェッショナルにとって最適な選択です.
さらにBusinessアカウントでは飛行計画や航空関連の意思決定に欠かせない正確でタイムリな気象情報や,Flightradar24のデータを商業的な目的で利用できます.
1万円パソコン“ラズベリー・パイ”で24時間フィード専用機を作る
ADS-B電波を受信したデータをFlightradar24に送信すると,Flightradar24を中心に広がる大きなネットワークの一部になることができます.
Businessアカウントを利用するためには,1つだけ要件があります.それは,Flightradar24に対して,24時間体制で常時データを提供することです.この常時のデータ供給は,航空機の動きを正確かつリアルタイムで把握するためのキーとなる要素です.
データを24時間提供し続けるには,確実で安定した受信・送信システムが必要ですが,普段仕事に使っている高価なパソコンをFlightrader24専用機にするわけにはいきません.
そんなときは「ラズベリー・パイ」の出番です.パソコンは事務やプログラミング,ウェブ検索など,さまざまな目的に利用する高価なマシンですが,ラズベリー・パイは特定の目的向けの専用コンピュータにしてしまっても惜しくない安価なコンピュータです.しかも低消費電力で小型で,使い捨ても気にならない常識外れのコンピュータです.
このラズベリー・パイをFlightrader24フィード専用マシンとして常時運用すればよいのです.
専用の受信アンテナと,受信データを解析するソフトウェアをラズベリー・パイにセットアップして(図4),ADS-B受信機を構築すれば,自宅周辺における航空機の動きを24時間体制で追跡し,Flightrader24に報告(フィードという)できます(図5).
フィードは,Flightradar24への貢献とみなされ,年会費499ドルのBusinessアカウントを無料で利用できるようになります.
〈井上 祐寛〉