[キット・モジュール]
32MSPS FPGA SDRトランシーバ
MZ-SDRBlockHF2

電子ブロック風の回路プログラミング!14ビットA-Dコンバータ&80dB可変ゲイン・アンプ搭載

32MSPS FPGA SDRトランシーバ MZ-SDRBlockHF2の概要

ハードウェア

写真1に示すのは,$16\mathrm{MHz}$までの計測や無線通信に使える$32\mathrm{MSPS}$のFPGA SDRトランシーバ MZ-SDRBlockHF2です.図1にブロック図を示します.

写真1 32MSPS FPGA SDRトランシーバ MZ-SDRBlockHF2(設計・開発:ラジアン)
図1 MZ-SDRBlock2のハードウェア構成

FPGAの内部回路を切り替えることで,本モジュールだけで,次のようなさまざまなアプリケーションを実現できます.

  • 短波帯以下の受信機,送信機
  • スペクトラム・アナライザ
  • オシロスコープ
  • 位相測定など各種計測器
  • 周波数特性の測定
  • チャープや任意波形など,各種信号発生

表1にスペックを示します.

表1  32MSPS FPGA SDRトランシーバ MZ-SDRBlockHF2のスペック

本モジュールは次のデバイスを搭載しています.

  • FPGA:24000個のロジック・エレメントを内蔵するMAX10
  • A-Dコンバータ:変換スピード $32\mathrm{MSPS}$,1チャネル,分解能14ビット(SDRブロックでは12ビット分を使用)
  • $0~80\mathrm{dB}$のゲイン可変タイプのロー・ノイズ・アンプ

入力範囲は,最大$0\mathrm{dBm}$付近から最小$-150\mathrm{dBm}$以下までです.

Excelを使って信号処理をカスタマイズする

SDRは,通信や計測の可能性を広げましたが,HDL言語など,新たに覚えなければプログラミング言語をマスタしたり,信号処理のアルゴリズムを勉強したり,ハードルは低くありません.長年SDR機器を設計していると,実はほぼ同じような回路を使いまわしていて,それらの組み合わせを変えているだけであることに気付きます.極論すると,SDRは次の5つの信号処理回路の組み合わせだけでできています.

  1. フィルタ
  2. ミキサ(乗算器)
  3. メモリ
  4. 各種演算
  5. 信号発生回路

FPGA内の各信号処理ブロックの入出力間にあるバスとバスとの間にスイッチ・マトリクスが配置されていて,パソコンのソフトウェアで,回路どうしの接続関係を設定して切り替えます.このようにすることで,FPGAの高速性,並列処理の恩恵を受けつつ再定義の容易さを同時に得られます.尖った性能を出そうとすると,部分最適化が必要になり汎用的なブロックは使い難いのですが,それはどの分野でも同じです.

MZ-SDRBlockHFは,これらの信号処理ブロックをあらかじめFPGA内に用意しておいて,USB経由でパソコンからその組み合わせだけを瞬時に組み替えられるSDR(Software Defined Radio)です(図2).これを“SDR Block”と命名しました(開発はラジアン社).

図2 MZ-SDRBlockHF2は,Excelで作られた電子ブロック風ツールを使って信号処理回路ブロックをつなぐことで,さまざまなSDRをカスタム設計できる

SDR Blockは,回路の再定義の際にHDL言語による再設計やFPGAの再コンフィグレーションが不要です.MZ-SDRBlockHF2上のFPGAには,表2に示す20種類のディジタル信号処理回路とスイッチ・マトリクスが書き込まれています.FPGA内の回路を設計するときは,実際に動かし性能を見ながら,これらの回路ブロックの接続を変更したり,定数を調整したりします.

図3に示すように,MZ-SDRBlockHF2を利用すれば,フルディジタルAMラジオもお絵描き感覚で簡単に開発することができます.

表2 MZ-SDRBlockHF2にはこれらの信号処理ブロックが書き込み済み
図3 MZ-SDRBlockHF2を使ってフルディジタル・ラジオを開発してみたところ

SDR Blockで基本設計を終えたら,VHDLコードで性能を最適化することもできます.例えば,CICフィルタの出力の分解能は,12ビット以上に高まっているため,それに応じたビット幅のバスに変更するとよいでしょう.また,MZ-SDRBlockHF2上のA-Dコンバータは,最高50MSPS,D-Aコンバータは$100\mathrm{MSPS}$以上まで対応できるため,その速度まで最適化してもよいでしょう

VHDLソースコード(NCOなど一部の機能を除く)をご希望のかたは,下記,ラジアン社ホームページまでご連絡ください.購入履歴を確認できしだい,ダウンロード方法をお知らせいたします.
http://radiun.net/

コラム これからは「A-D/D-A+コンピュータ」のフルディジタル処理以外ない

ソフトウェア・ラジオ(SDR,Software Defined Radio)は,ソフトウェアで定義された受信機という意味です.名前にラジオと付くために無線や通信に関わらないと自分には関係ないと思われています.でもそれは大きな誤解で,その応用範囲は幅広く電子機器全般に関わるものです(図4).

図4 通信から計測まで応用が広がるフルディジタル・ラジオ SDR(Software Defined Radio)

SDRという言葉の定義からすると受信機(無線機)であるべきですが,その根底に流れる思想は限りなく汎用的で,SDR的なものを無線以外にも応用すれば無限の可能性が見えてきます.無線通信機器とは,微弱な信号を増幅しフィルタを通して信号解析するしくみです.センサを使ってさまざまな反応をする無線以外の電子機器と本質は大きく変わりません.すでにSDRと同じ信号処理の技術を利用している応用は次のようにたくさんあります.

  1. 脳波,心電図測定
  2. 加速度,姿勢制御,振動解析装置
  3. 広帯域なオーディオ機器
  4. 超音波レーダ(魚群探知,流速計)
  5. 超音波エコー診断装置
  6. 信号発生装置(SG,AWG)
  7. 電磁界可視化装置
  8. FFTによるスペクトラム測定
  9. インピーダンス測定

無線通信は,さまざまな分野の知識を必要とする電子回路技術の集大成ですから,その習得は容易ではありません.しかし,無線通信の信号をソフトウェアで処理できれば,一気にハードルが下がり,一品一様のハードウェアを作る必要がないので,生産性も各段に上がります.