V-I特性を忠実に再現！SPICE モデル生成ツール SPICE Model Creator

LEDからツェナー，高電圧タイプまで，あらゆるダイオードに対応

$V-I$特性を忠実に再現するSPICEモデル生成の考え方

既存の商用シミュレータには，自動でSPICEモデルを生成する機能もありますが，実デバイスの$V-I$特性と完全に一致させることは難しい場合があります．この差は，理論式と実測特性のずれ，測定点の限定，内部抵抗の影響などが少なからず関係します．

自作したDiode SPICE Model Creatorは，測定した$V-I$特性そのものを基準にしてモデルを調整する仕組みです．理論値から一意に導出するのではなく，実データにグラフ形状を一致させることを重視した方法です．実デバイスの特性パラメータとは一致させることをあえてあきらめて，LEDから高耐圧ダイオードまで，幅広い特性領域に対応したモデリングが可能です．

モデル調整に用いる主要パラメータ

このツールでは，ダイオードの静特性を構成する基本的な3つのパラメータを調整して特性を再現します．これらは物理定数として厳密に一致させる目的ではなく，$V-I$特性を忠実に再現するための調整変数として扱います．

1. 直列抵抗$R_S$：高電流領域での電圧降下を支配する成分
2. エミッション係数$N$：電圧に対する電流増加の勾配を決める係数
3. 飽和電流$I_S$：低電圧領域における電流立ち上がりを左右する値

これらのパラメータを順方向特性の実測データに合わせて調整することで，単純な理論モデルでは再現しにくい電圧領域ごとの傾きの変化も表現できます．測定した複数点のデータを利用することで，特定の動作点だけでなく，実用範囲全体における近似精度を高めることが可能です．

逆特性と高耐圧ダイオードへの対応

Diode SPICE Model Creatorは，順方向特性だけでなく逆方向特性の再現にも対応します．逆バイアス領域では，ある電圧を超えると急激に電流が増加する降伏特性が現れます．この挙動はツェナーダイオードや保護用ダイオードの動作評価に直結します．

逆方向の特性は，降伏電圧$B_V$の設定により制御します．このパラメータを調整することで，ツェナー電圧の異なる複数のダイオード特性を再現できます．これにより，定電圧回路やサージ保護回路の動作確認に必要な逆特性の再現が可能です．

また，高電圧タイプのダイオードでは，低電流域から高電流域までの傾き変化が大きくなります．本ツールは電圧と電流の表示範囲を任意に設定できるため，特定の動作領域に焦点を当てた精密な特性合わせにも対応します．

回路設計における実務的な意味

SPICEシミュレーションでは，ダイオードのモデル誤差がスイッチング波形，損失計算，起動特性などに大きく影響します．特に電源回路や保護回路では，順方向電圧と逆方向降伏特性の再現精度が回路の安全性評価に直結します．

Diode SPICE Model Creatorは，物理モデルの厳密性よりも，実測$V-I$特性の再現性を優先する設計思想です．これにより，設計段階のシミュレーションと試作後の実測結果の乖離を抑えやすくなります．回路設計における検討精度の底上げに寄与する仕組みです．

〈著：ZEPマガジン〉

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参考文献

1. ［VOD/KIT/data］実験キットで学ぶ 初歩の電子回路設計，ZEPエンジニアリング株式会社．
2. ［VOD/KIT/data］実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門，ZEPエンジニアリング株式会社．
3. ［VOD/Full KIT/data］USBマルチ測定器付き！実測とシミュレーションで学ぶアナログ回路設計，ZEPエンジニアリング株式会社．
4. ［VOD］事例に学ぶ放熱基板パターン設計 成功への要点，ZEPエンジニアリング株式会社．
5. ［VOD］高速＆エラーレス！5G×EV時代のプリント基板＆回路設計 100の要点，ZEPエンジニアリング株式会社．
6. ［VOD］ Before After！ ハイパフォーマンス基板＆回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】/【IoT・無線・通信編】，ZEPエンジニアリング株式会社．
7. ［Book/PDF］デシベルから始めるプリント基板EMC 即答200，ZEPエンジニアリング株式会社．