自作RISC-V パイプラインCPUの設計


mmRISC-1のメモリ・ロード制御

自作RISC-VのFPGA実装とmmRISC-1のメモリ・ロード制御

図1 RISC-Vプロセッサの重要な機能の1つが,効率的なメモリ・アクセス制御.特に,ロード命令の処理には複数のステージが関わり,これにより命令のパイプラインが適切に動作する.[著・提供]圓山 宗智.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.詳細は[VOD/KIT] 実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門

1. RISC-Vアーキテクチャの特徴

RISC-Vは,シンプルで拡張性のあるオープンソースの命令セット・アーキテクチャです.これにより,自作プロセッサの開発やFPGAでの実装が可能となり,学術用途やエンジニアリングのプロジェクトで広く利用されています.今回解説するmmRISC-1は,小型で効率的なRISC-Vベースのプロセッサで,主にFPGAに実装するために設計されました.

2. メモリ・ロード制御のしくみ

RISC-Vプロセッサの重要な機能の1つが,効率的なメモリ・アクセス制御です.特に,ロード命令の処理には複数のステージが関わり,これにより命令のパイプラインが適切に動作します.以下はその詳細です.

ロード命令は,Eステージでメモリ・アクセスのアドレス計算を行い,次のMステージでメモリからデータを読み込み,Wステージでそのデータをレジスタに格納します.

このプロセスで注意すべきは,ロード命令のデータが次の命令で使われる場合,データがレジスタに格納されるまで,後続の命令が一時的にストールする必要がある点です.

3. パイプラインによる最適化

自作したmmRISC-1では,パイプライン方式を採用し,複数の命令を並行して処理することで効率を高めています.しかし,パイプライン処理には特有の問題があり,特にデータ依存によるストールが発生します.例えば,ロード命令の結果を次の命令で使用する場合,次の命令が結果を参照できるまで,処理がストールします.

RISC-Vの自作プロセッサ,特にmmRISC-1のメモリ・ロード制御は,パイプライン方式の効率的な設計が鍵です.メモリ・アクセスやパイプライン・ストールの管理が,実際のシステムにおけるパフォーマンスを大きく左右します.

キーワード解説

1. パイプライン処理

パイプライン処理は,CPUの複数のステージを並行して動作させ,処理速度を向上させる技術です.mmRISC-1では,命令フェッチ(F),デコード(D),実行(E),メモリ・アクセス(M),書き戻し(W)の5ステージが使用されます.これにより,各命令が次のステージに進む間,新たな命令を並行して処理できるため,システム全体の処理速度が向上します.

2. ロード命令とストール制御

ロード命令は,指定されたメモリ位置からデータをレジスタに読み込む命令です.問題は,ロード命令の結果が次の命令で必要になる場合に発生します.この場合,後続の命令はロード命令が完了するまでストールしなければならず,これを防ぐために「フォワーディング」や「ストール制御」が行われます.

3. レジスタ・フォワーディング

ストールを最小限に抑えるための技術として,レジスタ・フォワーディングが使用されます.フォワーディングは,まだレジスタに書き込まれていないデータをほかのステージから直接利用することで,ストールを回避します.この技術により,ロード命令とその後続の命令が効率的に処理されます.

mmRISC-1のメモリ・ロード制御は,パイプラインとストール制御の適切なバランスが要求されます.フォワーディング技術を駆使することで,処理速度を最大限に引き上げ,効率的な命令処理が可能になります.〈著:ZEPマガジン〉

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著者紹介

  • 出身地:京都市左京区
  • 仕事:1986年,日立製作所に入社し,SHマイコンの開発に従事.以降,ルネサステクノロジ,ベンチャー企業,大手半導体メーカにて,画像処理用SoCや各種マイコンおよび関連半導体デバイスの開発を統括.現在もマイコン製品設計に取り組んでいる.
  • 趣味:1978年からマイコン・FPGA・GPUと戯れ
  • 執筆活動:2000年からマイコンを絡めた雑誌記事と書籍を執筆

著書

  1. [VOD/KIT]実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. ARMベース・システムLSI開発の事例研究,Design Wave Magazine 2006年5月号,CQ出版社.
  3. ARM汎用プロセッサで使える汎用JTAGデバッガを自作する,Design Wave Magazine 2008年6月号,CQ出版社.
  4. 並列処理プロセッサxCORE徹底研究,インターフェース 2014年11月号~2015年6月号(連載),CQ出版社.
  5. Cで直叩き!超並列コンピュータGPU全速力,トランジスタ技術 2019年9月号(特集),CQ出版社.ほか
  6. 今すぐ使えるH8マイコン基板 初版2010年,増補版2011年,CQ出版社.
  7. 2枚入り小型ARMマイコン基板 2011年,CQ出版社.
  8. ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン 基板付き 2013年,CQ出版社.
  9. ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン 開発編  2013年,CQ出版社.
  10. SHマイコン活用記事全集 2014年,CQ出版社.
  11. FPGA電子工作スーパキット 2016年,CQ出版社.
  12. MAX10実験キットで学ぶFPGA&コンピュータ 2016年,CQ出版社.
  13. 完全版FPGA電子工作オールインワン・キット 2016年,CQ出版社.

参考文献

  1. Lチカ入門!ソフトウェア屋のためのHDL事はじめ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. Zynqで作るカスタム・コンピュータ・チップ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD/KIT]一緒に動かそう!Lチカから始めるFPGA開発【基礎編&実践編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD/KIT]Xilinx製FPGAで始めるHDL回路設計入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD/KIT]Zynqで初めてのFPGA×Linux I/O搭載カスタムSoC製作,ZEPエンジニアリング株式会社.
  6. [VOD]カメラ×ラズパイで一緒に!初めての画像処理プログラミング
  7. [VOD/KIT] 実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  8. [VOD/KIT]ARM Cortex-A9&FPGA内蔵SoC Zynqで初体験!オリジナル・プロセッサ開発入門,ZEPエンジニアリング株式会社.