導通信頼性テストの重要性


プリント基板の正しい見極め方

長期的な安定性まで見据えた試験が必要

図1 導通信頼性の評価は,初期の導通チェックだけでなく,長期的な安定性まで見据えた試験が必要.熱衝撃試験などの加速試験により,経年劣化を短期間で再現し,潜在的な不具合を発見する.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[提供・著]寺田 正一
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プリント基板における導通とは,内部配線やスルーホールを介して電気信号が正確に流れることです.導通状態を確認する導通試験は,基板の電気的な健全性を評価する基本的な工程です.検査時には正常でも,時間とともに接続が劣化する事例は少なくありません.導通不良は設計や製造における微細な欠陥に起因することが多く,長期的な信頼性を評価する必要があります.

熱衝撃試験による信頼性評価

導通信頼性を確認する代表的な方法が,熱衝撃試験です.この試験は,温度変化により材料が収縮や膨張を繰り返す状況を人工的に再現し,加速的に劣化を発生させる手法です.たとえば,エポキシ樹脂を使った基板では,$-65\ ^\circ\mathrm{C}$と$125\ ^\circ\mathrm{C}$の間で温度を交互に繰り返す温度サイクルが設定されます.この試験を繰り返すことで,内部配線の断線や抵抗値の変化といった現象を観察します.

温度サイクルを通して基板全体に機械的な応力が加わるため,配線やスルーホールの構造的不具合が顕在化しやすくなります.導通不良が発生するまでのサイクル数や変化点を記録することで,製品の寿命や安全マージンを見積もる指標とできます.

そのほかの加速試験手法

熱衝撃試験以外にも,導通信頼性を評価する方法はいくつかあります.高温環境に基板を長時間さらす恒温試験や,高温オイルに基板を浸して導通状態を観察する方法などもあります.いずれの方法も,JISやIPCなどの規格に準じて行われます.特にIPCでは,国際的に統一された評価基準が設定されており,製品の信頼性比較に用いられます.

  1. 熱衝撃試験:急激な温度変化を加え,機械的応力により導通不良を検出する
  2. 恒温試験:高温環境で基板を長時間保持し,経年変化を再現する
  3. 高温オイル浸漬試験:高温の油中に基板を浸し,微小な導通不良を検出する

まとめ

導通信頼性の評価は,初期の導通チェックだけでなく,長期的な安定性まで見据えた試験が必要です.熱衝撃試験などの加速試験により,経年劣化を短期間で再現し,潜在的な不具合を発見できます.検査データの積み重ねが,信頼性ある製品開発に不可欠です.

熱衝撃試験の概要と目的

熱衝撃試験とは,電子部品やプリント基板に急激な温度変化を繰り返し与えることで,材料や接続部の信頼性を評価する手法です.温度が変化することで,各種材料が膨張・収縮を繰り返し,内部に機械的応力が生じます.この応力により,時間の経過とともに発生する不具合を短時間で再現できます.導通不良や断線,はんだクラックなど,実使用時に発生しうるトラブルを事前に検出することが目的です.

実施条件と代表例

熱衝撃試験では,材料の特性に応じて温度範囲が設定されます.エポキシ樹脂系のプリント基板では,一般的に$-65\ ^\circ\mathrm{C}$から$125\ ^\circ\mathrm{C}$の範囲でサイクルを繰り返します.低温側と高温側に一定時間保持した後,急激に温度を移行させることで,構造体にストレスを与えます.サイクル数は数百回から数千回に及ぶこともあります.

試験後は導通状態の変化を計測し,基板内部の配線やスルーホールに生じた微細な損傷を評価します.抵抗値の増加や断線の兆候が観察されれば,材料や製造工程の改善が求められます.

信頼性試験としての意義

熱衝撃試験は,JISやIPCといった標準規格に基づいて行われます.特にIPC-TM-650では,詳細な手順や測定方法が定められており,国際的な信頼性評価基準として広く用いられています.これにより,製品の品質を客観的に比較することが可能となり,異なるメーカやロット間での信頼性の均一性を確保できます.

  1. 温度範囲の選定は材料の耐性に依存する
  2. 急激な温度変化により機械的応力を加える
  3. 長期使用を模擬し,短期間で劣化現象を再現する

まとめ

熱衝撃試験は,導通不良や断線の予兆を早期に捉える重要な評価手法です.温度ストレスに対する基板の構造耐性を確認することで,製品の長期安定性を保証するための根拠が得られます.設計・製造段階での品質確認において,不可欠な試験項目といえます.

〈著:ZEPマガジン〉

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著者紹介

  • 1972年 中央大学理工学部工業化学科卒業
  • 1972年 株式会社トゴシをかわきりに,設計・EMS業の株式会社ソーワコーポレーション,株式会社オーケープリントで,基板およびEMS事業の品質保証,技術開発全般に従事.その間,JIS規格,JPCA規格,JAXA規格などの制定に従事
  • 2013年 テラテック設立.プリント配線板関連の技術指導,技術開発,試作開発コンサルティング,研修などを手がける

著書

  1. [VOD]Before After!ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】

参考文献

  1. 逆引き101!KiCad&プリント基板設計テクニック集,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. 最新KiCad 6で一緒に始めよう!プリント基板開発 超入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
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