ビアにレジストはNG


プリント基板の正しい見極め方

中途半端なレジスト被覆は避ける

図1 ビアの処理は,プリント基板の長期的な信頼性に直結する.中途半端なレジスト被覆は避け,完全な貫通か埋め処理のどちらかに統一すべき.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[提供・著]寺田 正一
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プリント基板の設計において,ビアにレジストを被せる設計は慎重に検討すべきです.ビアとは,基板内の層間を電気的に接続するための導通穴で,一般的にΦ0.3mm程度のサイズが使用されます.ビア自体は非常に小さい構造ですが,適切に処理しないと長期的な信頼性に深刻な影響を及ぼします.

レジストの仕様によるリスク

ビアにレジストを被せる処理は,見た目上の理由で採用されることがあります.たとえば「部品用の穴ではないため,穴が開いているのが嫌だ」という理由です.しかし,レジストはそもそも絶縁膜であり,ビアを完全に覆いきる構造ではありません.レジストがビアの内側に垂れ込み,不均一に被さることで,以下のような問題が生じます.

  1. はんだが穴に詰まり,内部で酸化が進行する
  2. ビア内の導体が露出して腐食が進行する
  3. スルーホールが時間経過で断線する

これらはすべて,後年に深刻な不良として表面化します.試作段階で問題が出ない場合でも,量産品では確実に避けるべきです.

ビアの正しい処理方法

ビアにレジストを被せたい場合,選択肢は2つしかありません.1つは「完全に貫通させてレジストを一切かけない」方法,もう1つは「ビアを導電性ペースト等で完全に埋めたうえでレジストを施す」方法です.後者はコストが上がりますが,信頼性は高まります.

中途半端にビアにレジストをかけると,はんだが不均一に残留したり,熱でレジストが破れて導体が露出する可能性があります.これが酸化や腐食,断線の原因になります.

信頼性の観点からの検査の必要性

製品用途によって,どの程度の検査が必要かを判断する必要があります.全数検査は理想的ですが現実的ではないため,破壊検査や抜き取り検査が採用されます.

  1. 寸法検査などは抜き取りで対応する
  2. 破壊検査は,ロット単位や工程安定度に応じて頻度を設定する
  3. 宇宙用途など高信頼性要求では,クーポン試験を併用して全数検査に近い精度を確保する

検査仕様の策定には,使用期間や環境条件,工程の変動要因を踏まえることが重要です.

まとめ

ビアの処理は,プリント基板の長期的な信頼性に直結する重要な要素です.中途半端なレジスト被覆は避け,完全な貫通か埋め処理のどちらかに統一すべきです.検査体制も含めて,製品仕様に応じた設計判断が必要です.

ビアとは何か:小さな穴が支える電気接続の要

ビアとは,プリント基板(PCB)の異なる層を電気的に接続するために設けられた微細な導通孔です.多層構造をもつ現代のPCBでは,信号や電源を複数層に分散して配置する必要があるため,ビアの役割は極めて重要です.

ビアの構造と種類

ビアは,内側を銅でめっきして導電路を形成しています.外径はΦ0.3~0.5mm程度で,ランドと呼ばれる接続パッドに接続されます.ビアには次のような種類があります.

  1. スルービア(Through Hole Via)
  2. ブラインドビア(Blind Via)
  3. ベリッドビア(Buried Via)

スルービアは基板全体を貫通し,製造も容易ですが,設計上のスペースを取ります.ブラインドビアやベリッドビアは,上層と中間層,または中間層どうしを接続するもので,より高密度な配線が可能です.

レジストとビアの関係

ビア上にレジストを施す処理は,一見保護的な効果があるように思われますが,実際には不均一な被膜となり,はんだ残留や腐食の原因になります.特にスルービアでは,レジストがビア内部に垂れ込むことで,以下のような問題が生じます.

  1. 不良ソルダによる導通不良
  2. 熱膨張によるレジスト破断
  3. 露出導体の酸化による断線

これを回避するには,ビアの内壁を完全に埋めたうえでレジストを施す「埋めビア」処理が有効です.処理コストは上がりますが,高信頼性用途では不可欠な手法です.

ビア設計と検査の考え方

ビアは単なる穴ではなく,電気的・機械的特性に影響する構造です.設計段階で信頼性を考慮し,適切な処理方法を選択することが重要です.検査においても,外観だけでなく断面観察や破壊検査が求められます.

ビアの信頼性は,基板全体の寿命と直結します.適切な設計判断と製造プロセスの管理が求められます.

〈著:ZEPマガジン〉

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著者紹介

  • 1972年 中央大学理工学部工業化学科卒業
  • 1972年 株式会社トゴシをかわきりに,設計・EMS業の株式会社ソーワコーポレーション,株式会社オーケープリントで,基板およびEMS事業の品質保証,技術開発全般に従事.その間,JIS規格,JPCA規格,JAXA規格などの制定に従事
  • 2013年 テラテック設立.プリント配線板関連の技術指導,技術開発,試作開発コンサルティング,研修などを手がける

著書

  1. [VOD]Before After!ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】

参考文献

  1. 逆引き101!KiCad&プリント基板設計テクニック集,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. 最新KiCad 6で一緒に始めよう!プリント基板開発 超入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD]Gbps超 高速伝送基板の設計ノウハウ&評価技術,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD]高速&エラーレス!5G×EV時代のプリント基板&回路設計 100の要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD]事例に学ぶ放熱基板パターン設計 成功への要点,ZEPエンジニアリング株式会社.