オープンソースな命令セットRISC-V


1万円 FPGAスタータキットで作る RISC-V CPU


[Webinar/KIT/data]新人技術者のためのRISC-V CPU設計 初めの一歩(5月31日~6月7日,2日コース)


RISC-Vの自由性と可能性

図1 RISC-Vは自由に扱えるISA.FPGAとの組み合わせにより,アーキテクチャを自分で設計し,学ぶことができる.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.参考:[VOD/KIT] 実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門

注目を集めている命令セット・アーキテクチャにRISC-Vがあります.このRISC-Vは,誰もが自由に使えるオープンソースのISAであり,従来の商用ISAとは異なり,ライセンス費用やロイヤルティの支払いが不要です.

このような背景のもと,1万円程度のFPGAスタータキットを使って,RISC-V CPUを自ら設計・実装して学ぶというアプローチが可能になっています.特定のベンダに依存しないアーキテクチャだからこそ,教育用途や個人の開発環境にも適しています.

FPGAとRISC-Vの相性

FPGA(Field Programmable Gate Array)は,回路を自由に書き換え可能なデバイスです.この柔軟性は,命令セットをカスタマイズできるRISC-Vと非常に相性がよいです.

RISC-Vでは,基本的な命令セットに加えて,必要に応じた独自の命令を追加できます.たとえば,AI処理や画像圧縮処理に特化した命令を拡張することも可能です.この自由度が,FPGA上での試行錯誤を促進します.

学びのステップ

  1. RISC-Vの基本命令仕様を理解する
  2. HDLでCPUコアを記述し,FPGAに実装する
  3. デバッグと検証の手法を習得する
  4. 独自拡張や性能比較を試みる

この一連の学習プロセスは,命令セットからマイクロアーキテクチャへの理解を深めるのに非常に効果的です.ソフトウェアとハードウェアの境界を意識することができる点も重要です.

まとめ

RISC-Vは自由に扱えるISAであり,FPGAとの組み合わせにより,アーキテクチャを自分で設計し,学ぶことができます.1万円のスタータキットを活用することで,CPU設計の学びが手軽になります.

RISC-Vの自由性と可能性

RISC-Vは命令セット・アーキテクチャ(ISA)をオープンに定義した仕様であり,その最大の特徴は「自由に使える」という点にあります.従来の商用ISA,たとえばARMなどでは,ライセンス取得やロイヤルティの支払いが必要です.

一方,RISC-Vは仕様そのものが公開されており,誰でもハードウェアIPやソフトウェア環境を構築できます.また,ISAがシンプルで設計しやすいため,HDLでの実装も容易になります.

命令セットがシンプルである意義

RISC-Vでは,命令セットが必要最小限に定義されており,平均的な命令あたりのクロック・サイクル数が少なくなります.これにより高クロックで動作可能となり,結果としてプログラム実行時間を短縮できます.

また,複雑な命令が排除されているため,命令の実装や検証の工数が減り,回路規模も抑えることができます.

拡張性と未来のアーキテクチャ設計

RISC-Vはマイクロアーキテクチャと独立してISAを定義しており,将来的なプロセッサ設計にも柔軟に対応できます.

命令コードには拡張領域が設けられており,画像処理,AI演算,大規模行列計算などの専用命令を追加可能です.

  1. 拡張命令の追加が容易
  2. 専用アプリケーションに特化した最適化が可能
  3. 新しい命令形式への移行も比較的簡単

〈著:ZEPマガジン〉

動画を見る,または記事を読む

著者紹介

  • 出身地:京都市左京区
  • 仕事:1986年,日立製作所に入社し,SHマイコンの開発に従事.以降,ルネサステクノロジ,ベンチャー企業,大手半導体メーカにて,画像処理用SoCや各種マイコンおよび関連半導体デバイスの開発を統括.現在もマイコン製品設計に取り組んでいる.
  • 趣味:1978年からマイコン・FPGA・GPUと戯れ
  • 執筆活動:2000年からマイコンを絡めた雑誌記事と書籍を執筆

著書

  1. [VOD/KIT]実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. ARMベース・システムLSI開発の事例研究,Design Wave Magazine 2006年5月号,CQ出版社.
  3. ARM汎用プロセッサで使える汎用JTAGデバッガを自作する,Design Wave Magazine 2008年6月号,CQ出版社.
  4. 並列処理プロセッサxCORE徹底研究,インターフェース 2014年11月号~2015年6月号(連載),CQ出版社.
  5. Cで直叩き!超並列コンピュータGPU全速力,トランジスタ技術 2019年9月号(特集),CQ出版社.ほか
  6. 今すぐ使えるH8マイコン基板 初版2010年,増補版2011年,CQ出版社.
  7. 2枚入り小型ARMマイコン基板 2011年,CQ出版社.
  8. ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン 基板付き 2013年,CQ出版社.
  9. ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン 開発編  2013年,CQ出版社.
  10. SHマイコン活用記事全集 2014年,CQ出版社.
  11. FPGA電子工作スーパキット 2016年,CQ出版社.
  12. MAX10実験キットで学ぶFPGA&コンピュータ 2016年,CQ出版社.
  13. 完全版FPGA電子工作オールインワン・キット 2016年,CQ出版社.

参考文献

  1. Lチカ入門!ソフトウェア屋のためのHDL事はじめ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. Zynqで作るカスタム・コンピュータ・チップ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD/KIT]一緒に動かそう!Lチカから始めるFPGA開発【基礎編&実践編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD/KIT]Xilinx製FPGAで始めるHDL回路設計入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD/KIT]Zynqで初めてのFPGA×Linux I/O搭載カスタムSoC製作,ZEPエンジニアリング株式会社.
  6. [VOD]カメラ×ラズパイで一緒に!初めての画像処理プログラミング
  7. [VOD/KIT] 実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  8. [VOD/KIT]ARM Cortex-A9&FPGA内蔵SoC Zynqで初体験!オリジナル・プロセッサ開発入門,ZEPエンジニアリング株式会社.