超小型Xyloniボードで動かすRISC-V Sapphire SoCの仕様
1万円 FPGAスタータキットで作る RISC-V CPU
[Webinar/KIT/data]新人技術者のためのRISC-V CPU設計 初めの一歩(5月31日~6月7日,2日コース)
RISC-V Sapphire SoCの全体像
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図1 Xyloniは,USBコネクタ,ユーザ用ボタン,LED,SDカード・スロットといった実用的なI/Oを搭載.制御信号はTrion T8 FPGAに直結しており,ユーザ・ロジックから自由に制御できる.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.参考:[VOD/KIT] 実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門 |
Xyloniボードは,手のひらサイズのFPGA開発キットでありながら,RISC-Vコアを含むSapphire SoCの実装に対応しています.このボードはTrion T8 FPGAを搭載しており,$7384$個のロジック・エレメントと$77$kbのRAMを内蔵しています.FPGAの基本動作に加えて,USB経由で複数のインターフェースを利用できる構成が特徴です.
具体的には,SPI書き込み,JTAGデバッグ,UART通信,VCCIO設定の4インターフェースが用意されており,それぞれFTDI社のFT4232Hが担っています.これにより,RISC-Vコアのプログラム書き込みやCソース・レベルでのデバッグが可能です.
Xyloniボードの機能的特徴
Xyloniには,USBコネクタ,ユーザ用ボタン,LED,SDカード・スロットといった実用的なI/Oが実装されています.制御信号はTrion T8 FPGAに直結しており,ユーザ・ロジックから自由に制御できます.また,33.33MHzのクロック発振器が搭載されており,内部PLLで周波数を自在に変更できます.
FPGAの起動は,USB経由でSPI NOR FLASHにビット・ストリームを書き込むことにより行います.起動時にはCDONE端子がHighになることで,ユーザ・ロジックの動作が可能になります.
Sapphire SoCの仕様と実装方針
実装されるSapphire SoCは,RV32IMCアーキテクチャを採用した32ビットRISC-V CPUを中心に構成されています.内蔵RAMを活用することで,命令・データを含む合計$4$KBのメモリを確保しています.また,同期通信用SPIを2チャネル,非同期通信用UARTを1チャネル搭載し,外部とのインターフェースも確保されています.
RISC-VアーキテクチャとRV32IMCの実用性
RISC-Vはオープンな命令セット・アーキテクチャであり,基本命令セットであるRV32Iを軸に,多様な拡張が可能な構造です.その中でも,RV32IMCはマイコン用途に向いた構成であり,以下の拡張命令を含んでいます.
- M(乗算・除算)命令により,演算処理の幅が広がる
- C(16ビット圧縮)命令により,プログラム・サイズが縮小される
圧縮命令は特にリソースが限られる小型FPGAにおいて有効であり,$4$KBのメモリ空間でも実用的な処理が実現可能です.Sapphire SoCの設計では,C命令の導入によってメモリ効率を確保しつつ,動作コードを保持しています.
また,RISC-V標準のデバッグインターフェースをJTAG経由で提供することで,OpenOCDなどの汎用デバッガを利用可能です.これにより,ソフトウェア開発者にとっては一般的なCコードによる開発と同様のデバッグ手法を適用できます.
このような構成により,RV32IMCベースのSapphire SoCは教育用,試作用途,制御用マイコンのプロトタイプ開発など多様な用途に適しています.拡張命令の柔軟性と標準化されたデバッグ環境は,RISC-Vの普及を後押ししています.
〈著:ZEPマガジン〉
著者紹介
- 出身地:京都市左京区
- 仕事:1986年,日立製作所に入社し,SHマイコンの開発に従事.以降,ルネサステクノロジ,ベンチャー企業,大手半導体メーカにて,画像処理用SoCや各種マイコンおよび関連半導体デバイスの開発を統括.現在もマイコン製品設計に取り組んでいる.
- 趣味:1978年からマイコン・FPGA・GPUと戯れ
- 執筆活動:2000年からマイコンを絡めた雑誌記事と書籍を執筆
著書
- [VOD/KIT]実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- ARMベース・システムLSI開発の事例研究,Design Wave Magazine 2006年5月号,CQ出版社.
- ARM汎用プロセッサで使える汎用JTAGデバッガを自作する,Design Wave Magazine 2008年6月号,CQ出版社.
- 並列処理プロセッサxCORE徹底研究,インターフェース 2014年11月号~2015年6月号(連載),CQ出版社.
- Cで直叩き!超並列コンピュータGPU全速力,トランジスタ技術 2019年9月号(特集),CQ出版社.ほか
- 今すぐ使えるH8マイコン基板 初版2010年,増補版2011年,CQ出版社.
- 2枚入り小型ARMマイコン基板 2011年,CQ出版社.
- ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン 基板付き 2013年,CQ出版社.
- ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン 開発編 2013年,CQ出版社.
- SHマイコン活用記事全集 2014年,CQ出版社.
- FPGA電子工作スーパキット 2016年,CQ出版社.
- MAX10実験キットで学ぶFPGA&コンピュータ 2016年,CQ出版社.
- 完全版FPGA電子工作オールインワン・キット 2016年,CQ出版社.
参考文献
- Lチカ入門!ソフトウェア屋のためのHDL事はじめ,ZEPエンジニアリング株式会社.
- Zynqで作るカスタム・コンピュータ・チップ,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]一緒に動かそう!Lチカから始めるFPGA開発【基礎編&実践編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]Xilinx製FPGAで始めるHDL回路設計入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]Zynqで初めてのFPGA×Linux I/O搭載カスタムSoC製作,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]カメラ×ラズパイで一緒に!初めての画像処理プログラミング
- [VOD/KIT] 実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]ARM Cortex-A9&FPGA内蔵SoC Zynqで初体験!オリジナル・プロセッサ開発入門,ZEPエンジニアリング株式会社.