温度/回転から電力まで:「制御」の定義と応用
ラズパイとPythonで一緒に!状態制御&センサ・フュージョン入門
制御の定義
|
|---|
| 図1 制御では,対象,状態,目標,操作が明確に区別される.対象はロボットや装置.状態は姿勢,速度,温度など.目標は望ましい値.操作は入力として与える物理量.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.詳細はVOD/Pi KIT/data]ラズパイとPythonで一緒に!カルマン・フィルタ&センサ・フュージョン入門 |
制御とは,注目する対象があり,注目する状態があり,その状態を目標の状態へ近づけるように操作を加える行為です.対象はロボット,家電,発電設備のような実体です.状態は姿勢,温度,回転数,周波数のように時間とともに変化する量です.目標は望ましい状態です.操作は電圧,電流,トルク,熱量のように対象へ与える入力です.この4つの要素を区別できると,分野が変わっても制御の見通しが良くなります.
制御は「思い通りに操る」という直感に近い技術です.一方で,現実の対象は遅れや外乱を持ちます.操作を加えても,状態がすぐには変わらない場合があります.操作と状態の関係を理解し,状態を観測し,目標との差を評価し,操作を更新する流れが必要です.この流れが自動化の中核です.
- 対象:操作を加える相手です
- 状態:注目して管理したい量です
- 目標:到達させたい状態です
- 操作:状態を変えるための入力です
回転と姿勢の制御は状態が見えにくい領域です
二輪ロボットのバランス制御では,対象はロボットです.注目する状態は姿勢です.目標は直立です.操作はタイヤを回すための電圧です.姿勢が傾くと,電圧を変えてタイヤの回転を変え,姿勢を戻します.この一連の流れが回転と姿勢の制御です.
姿勢は内部状態として扱われます.観測できる情報はセンサ出力です.角速度や加速度など複数の情報から姿勢を推定して使います.ここでセンサ・フュージョンが重要です.推定が不安定だと,操作が揺れ,姿勢も揺れます.制御は推定の品質に強く依存します.ラズパイとPythonでは,周期的にセンサを読み,推定と操作更新を繰り返す構成を作れます.
- 姿勢はセンサ出力から推定して扱う量です
- 推定が揺れると操作も揺れる構造です
- 周期的な更新が安定性を左右する構造です
温度制御では,対象は空調機器です.状態は室温です.目標は設定温度です.操作は冷却や加熱の出力です.室温は外気や日射,人の出入りで変動します.外乱が入っても目標を保つために,操作を更新し続けます.温度の変化は遅いので,制御は応答の遅れも考慮して設計します.
電力の制御では,状態として周波数や電圧が重要です.電力系統は負荷の変動を常に受けます.周波数が基準から外れると,設備の保護動作や停電リスクにつながります.$50$Hzや$60$Hzの基準を守るために,発電出力や系統運用が調整されます.電力の制御は,回転機,変換器,負荷を含む大規模な対象を扱う点が特徴です.
- 温度制御:外乱が入っても目標温度を保つ制御です
- 電力制御:周波数や電圧の基準を保つ制御です
- 共通点:状態と目標の差を使い操作を更新する構造です
自動運転とドローンで必要になる視点
自動運転やドローンでは,制御対象が複雑で状態の数も増えます.位置,速度,姿勢,推力など複数の状態を同時に扱います.観測はセンサに依存し,単一センサでは不十分です.複数センサの統合で状態を推定し,推定値をもとに操作を決めます.センサ・フュージョンと制御は一体の設計課題です.ラズパイとPythonは,この一連の流れを小さな実験系で確認する環境として扱えます.
〈ZEPマガジン〉参考文献
- [VOD/Pi KIT]MATLAB/Simulink×ラズパイで学ぶロボット制御入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]MATLAB/Simulink×ラズパイで学ぶロボット制御入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/Pi400 KIT]SLAMロボット&ラズパイ付き!ROSプログラミング超入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]確率・統計処理&真値推定!自動運転時代のカルマン・フィルタ入門,ZEPエンジニアリング株式会社.