ポケット・ネットワーク・アナライザ NanoVNAV2入門
精巧で繊細!コネクタはトルク・レンチでケーブルと接続
トルク管理が重要!精巧で繊細なSMAコネクタとケーブルの接続
図1 ネットワーク・アナライザにSMAコネクタを接続する際は,レンチを使って指定されたトルクで締め付けることが常識.無視すれば測定性能が低下し,1000万円を超える機器が使用不能になることもある.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[提供・著]知念 幸勇 詳細:[VOD/KIT]3GHzネットアナ付き!RF回路シミュレーション&設計・測定入門 |
NanoVNAV2とは?
NanoVNAV2(SAAV2)は,ポータブル・ネットワーク・アナライザとして人気を集める高性能ツールです.この小型機器は,PCのUSBポートを介して操作可能であり,簡易的な設定でRF回路やアンテナの特性評価が行えます.その操作性とコスト・パフォーマンスの良さから,多くの技術者やエンジニアが愛用しています.
NanoVNAV2を使用する際,重要なのはデバイスのポート(Tx(0)ポートとRx(1)ポート)や,接続するSMAコネクタとケーブルの扱いです.これらのコンポーネントは,精密かつ繊細に取り扱う必要があります.
SMAコネクタとアッテネータの扱い方
SMAコネクタは非常に精巧な部品であり,そのゆるみや損傷は測定結果に大きな影響を与えます.アッテネータ(10dB+6dBまたは15dB)の接続では,Rx(1)ポートにしっかりと装着し,ゆるみがないことを確認してください.Tx(0)ポートにはアッテネータを接続しない仕様です.このような接続条件を守ることが正確な測定の鍵です.
一般的なネットワーク・アナライザでは,SMAコネクタを締め付ける際,トルク・レンチを用いて適切なトルクで固定する必要があります.これにより,コネクタ内部の寸法や損傷リスクを最小限に抑えます.NanoVNAV2においてはそこまで厳密な取り扱いは求められませんが,それでも芯線を曲げたり過剰に力を加えたりしないよう注意が必要です.
校正と正確な測定のためのポイント
正確な測定を行うためには,NanoVNAV2を使用する前に,校正用のSMA端子(SOLT:Short, Open, Load, Through)を確認する必要があります.これらの端子は,測定精度を保つための基準として機能します.特に高周波測定では,わずかな誤差が測定結果に大きな影響を与えるため,慎重な取り扱いが求められます.
測定を開始する前に,すべての接続が確実であることを確認してください.ゆるんだ接続や不適切なケーブルの使用は,測定誤差やデバイスの損傷につながる可能性があります.NanoVNAV2の特性を最大限に活かすには,基本的な操作手順を守ると同時に,接続部品を丁寧に扱うことが重要です.
SMAコネクタの精巧さと取り扱いの重要性
SMAコネクタは,高周波測定において広く使用される同軸コネクタです.その小型で高精度な構造は,高周波帯域での低損失伝送を可能にします.しかし,この精密さゆえに,取り扱いには細心の注意が必要です.
まず,SMAコネクタの設計には厳密な寸法管理が求められます.内部導体と外部導体の間隔は,特定のインピーダンスを確保するために非常に精密に設定されています.これにより,高周波信号が正確に伝送されるのです.この精密な構造は,外力や不適切な締め付けによる変形や損傷を受けやすいという特徴ももっています.
本格的なネットワーク・アナライザでは,SMAコネクタを接続する際にトルク・レンチを使用し,指定されたトルクで締め付けを行うことが推奨されています.この手順を無視すると,測定器全体の性能が低下し,最悪の場合,機器が使用不能になることもあります.
NanoVNAV2のようなコンパクトなデバイスでも,コネクタの損傷は測定精度に影響を与えるため,接続時の注意が求められます.アッテネータの取り付けでは,ゆるみを防ぐために適度な力で締め付けを行い,必要に応じて定期的なチェックを行うことが推奨されます.
SMAコネクタは高精度測定の要であり,その取り扱いの正確さが測定結果を左右します.小型で手軽なNanoVNAV2を使う場合でも,この基礎的な取り扱いの重要性を理解し,適切に扱うことで,より正確な測定データを得ることができるでしょう.〈著:ZEPマガジン〉
著者紹介
- 沖縄高専名誉教授,GLEX代表(教育・研究コンサルタント)
- (株)東芝にて光通信用半導体・送受信器の開発,高周波デバイスの応用技術などに25年間従事.国立沖縄高専にて,アナログ・ディジタル電子回路,高周波回路の講義などに12年間従事.専門領域:光通信,無線工学,半導体工学, バイオ・エレクトロニクス(工学博士,第一級陸上無線技術士,電気通信主任技術者)
著書
- [VOD/KIT]3GHzネットアナ付き!RF回路シミュレーション&設計・測定入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- 7大電子回路シミュレータRF解析性能の見極め方,トランジスタ技術2020年1月号,CQ出版社.
- 測定周波数50k~900MHz 5千円のネットワーク・アナライザ NanoVNA,トランジスタ技術2020年7月号,CQ出版社.
- 2.5GHz帯アンテナとLNA回路製作,トランジスタ技術2020年2~3月号,CQ出版社
- QAM-OFDM変調ディジタル無線通信における多層・複合材料の電磁波遮蔽の評価,電子情報通信学会論文誌 招待論文2021年6月号,電子情報通信学会論文誌
参考文献
- [VOD]Pythonで学ぶ マクスウェル方程式 【電場編】+【磁場編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]Before After!ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】/【IoT・無線・通信編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]高精度アナログ計測回路&基板設計ノウハウ,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]事例に学ぶ放熱基板パターン設計 成功への要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [KIT]ミリ波5G対応アップ・ダウン・コンバータMkⅡ,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [KIT]実験用28GHzミリ波パッチ・アンテナ,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [技術連載]5G時代の先進ミリ波ディジタル無線実験室 [Vol.8 初めての28GHzミリ波伝搬実験],ZEPエンジニアリング株式会社.