CLAS vs RTK 測位精度比べ
みちびき位置補正信号CLAS入門
CLASの特徴
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図1 数cmレベルの衛星測位技術の代表的な方式といえば「RTK(Real Time Kinematic)」と「CLAS(Centimeter Level Augmentation Service)」.両社の違いは?.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[著]岡本修 詳細:[VOD]センチm測位RTKのしくみと開発技術 |
高精度な衛星測位技術には複数の方式があります.その中でも「RTK(Real Time Kinematic)」と「CLAS(Centimeter Level Augmentation Service)」は代表的な手法です.両者は数cmレベルの精度を達成できますが,構成や利用条件に大きな違いがあります.ここでは両方式を比較しながら技術的特徴を整理します.
CLASの特徴
CLASはみちびき(準天頂衛星)から送信されるL6D信号を利用して補正情報を受信します.専用受信機を用意すれば基準局を設置せず,日本全国で利用できるしくみです.配信は無料であり,通信回線を必要としません.災害時に通信インフラが利用できない状況でも動作する点は大きな強みです.
一方でL6D信号には2,000bpsという厳しい帯域制限があり,配信遅延も約8秒発生します.そのため瞬時性を求める用途では制約があります.精度はRMS値でおよそ6.9cm,95$\%$値で12cmとされています.これは搬送波を用いた即位手法であり,コード測位のおよそ60cm精度と比べると大幅に優れています.
- 基準局が不要で全国で利用可能.
- 通信インフラを必要としない.
- 災害時の利用に有効.
- 帯域制限と配信遅延が存在する.
- 専用受信機が必要.
RTKの特徴
RTKは基準局と移動局の両方でGNSS信号を受信し,基準局で観測されたデータをリアルタイムに移動局へ伝送して測位演算を行います.RTKLIBなどのソフトウェアを用いて処理し,数cm精度を毎秒維持できます.精度は一般的に2cm程度とされており,CLASに比べて高い水準です.
ただし,RTKには基準局の設置と安定した通信回線が必須です.モバイル・ルータや無線機を通じて基準局データを伝送するしくみのため,通信環境の品質が測位結果に直結します.さらに基準局の位置を高精度に固定する必要があるため,運用のハードルは高くなります.
- 基準局と移動局の両方に受信機とアンテナが必要.
- 基準局データを毎秒伝送する通信手段が必須.
- 環境が整えば2cm程度の精度を実現.
- 通信品質に測位精度が依存する.
- 運用に専門的な知識が必要.
CLASとRTKの精度比較
実測の分布を比較すると,RTKでは±2cmの範囲に収まるケースが多い一方,CLASは約7cm程度のばらつきを示すことがあります.数値だけを見るとRTKが優位ですが,CLASは基準局レスで全国どこでも利用できる点に大きな価値があります.利用目的に応じて,通信環境や設備コストと精度要求のバランスを考えることが重要です.
〈著:ZEPマガジン〉参考文献
- [VOD/KIT]RTKポータブル・センチ・メートル測位キット,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/Pi400 KIT]SLAMロボット&ラズパイ付き!ROSプログラミング超入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]確率・統計処理&真値推定!自動運転時代のカルマン・フィルタ入門,ZEPエンジニアリング株式会社.